5) 海外のマイクロスケールケミストリーの現状    

1) 米国の大学で始まったマイクロスケールケミルトリー

 1980年代にアメリカの大学で学生実験の組織的系統的なマイクロスケール化が始まりました。きっかけは実験室の環境改善でした。環境意識の高まり、廃液等に対する規制の強化はマイクロスケール実験普及の追い風となりました。
 マイクロスケール有機化学実験用のすぐれた実験キットが考案され、多くの会社から販売されています。米国の大学の有機化学実験はほとんどマイクロスケール化されています。
 また、プラスチック製の研究・検査用実験器具を化学実験に活用することも広がっています。
Journal of Chemical Education 誌では1989年以来,Microscale Laboratoryが掲載されており、成書も種々あります。

 

2) アメリカのナショナルマイクロスケールケミストリーセンター(NMCC)の活動

 1993年には米環境保護庁(EPA)、マサチューセッツ州毒物削減研究所、アメリカ科学財団(NSF)の支援のもとマサチューセッツ州のMerrimack CollegeにNational Microscale Chemistry Center(NMCC)が設置されました。このセンターではマイクロスケール化学の研究開発を行い、さらに大学レベルをはじめ初・中等教育レベル向けのワークショップを行い、マイクロスケール化学の普及に努めました。NMCCが行うワークショップには外国からも多数の参加があり、米国外へのマイクロスケール化学の普及にも力を入れてました。

3) 諸外国のマイクロスケールケミストリー

 現在、多くの国にマイクロスケールケミストリーセンターが設置されています。

マイクロスケール化学センターを設置している国

地 域
国  名
アジア
イスラエル、シンガポール、中国
アフリカ
エジプト、エチオピア、南アフリカ、モーリタニア
オセアニア
オーストラリア
北米、中米、南米
アメリカ、アルゼンチン、エクアドル、ガテマラ、コロンビア、チリ、ドミニカ、ニカラガ、ハイチ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ、ボリビア、ホンジュラス、メキシコ
ヨーロッパ
イギリス、イタリア、オーストリア、オランダ、スウェーデン、スペイン、ドイツ、トルコ、フィンランド、ベルギー、ロシア

  この表以外の国でも、マイクロスケール実験は行われています。
  これらの国の多くでは、マイクロスケール実験用のいろいろな器具が開発されています。

 

4) 国際学会、シンポジウムの開催

 国際化学教育会議では、 1998年以来マイクロスケール実験のシンポジウム and/or ワークショップが開催されている。
 
 国際マイクロスケールケミストリーシンポジウムもこれまでに3回開催されている。   
地 域
開 催 地
第1回
メキシコシティ(アメリカ大陸のみ)
第2回
香港
第3回

http://www.cpe.fr/ectn-assoc/archives/lib/2005/N01/200501_3rd_IMCS_Announc.pdf

メキシコシティ     
       Pike,Szafran,Singh各教授と荻野教授
 
 

参考文献: 荻野和子「マイクロスケール実験の広場へのお誘い」化学と教育, 49, 110(2001).